鳶色の瞳

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   幸い敵の槍撃を防ぐことができた。    そう、安堵したのもつかの間、すぐに突きが迫った。  幸隆は直感的に体を反らした。胴に衝撃をうけた。  槍は胴を擦ったに過ぎなかったが、幸隆は落馬していた。  馬を再び反転させた男は、倒れている幸隆目指し突撃する。  迫り来る男が幸隆に近づくが、突如、進行方向を変えた。  幸隆が遠ざかる男のほうを見ると、宗介が突進していた。  二人は間合いに入る直前で馬を止めて睨み合った。が、すぐに男は宗介から離れた。 「暗くなった。決着は合戦でつけよう」 と、言い放ち男は去って行った。  若様と呼ばれた男が、武田晴信であり、のちに武田信玄を名乗る英傑だとは、幸隆は知るよしもない。
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