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真田幸隆(さなだ ゆきたか)は、この時28歳。眉目秀麗な真田の血を引き継いだこの男は、凛々しい顔で聴き入っていた。
となりには、海野棟綱の嫡男(ちゃくなん)・海野幸義(ゆきよし)がいた。
その幸義が、発した。
「上杉の援軍など頼るに足らぬ。ここは我らだけで撃退する策を練るべきではないか!」
激しい語勢に、場がざわめいた。
「ゆ、幸義、なにを言う。上杉家は幕府より関東の治安を任されているのだぞ。そ、それを頼るに足らぬとは……」
棟綱は顔を真っ赤にしている。
「父上、それは過去の話。こうして武田、村上らが他国を攻めるのは上杉の力……いや、幕府そのものの力が衰えたからではないですか!」
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