天文10年(1541年)  5月 『海野平の戦い』

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   真田幸隆(さなだ ゆきたか)は、この時28歳。眉目秀麗な真田の血を引き継いだこの男は、凛々しい顔で聴き入っていた。  となりには、海野棟綱の嫡男(ちゃくなん)・海野幸義(ゆきよし)がいた。  その幸義が、発した。 「上杉の援軍など頼るに足らぬ。ここは我らだけで撃退する策を練るべきではないか!」  激しい語勢に、場がざわめいた。 「ゆ、幸義、なにを言う。上杉家は幕府より関東の治安を任されているのだぞ。そ、それを頼るに足らぬとは……」    棟綱は顔を真っ赤にしている。 「父上、それは過去の話。こうして武田、村上らが他国を攻めるのは上杉の力……いや、幕府そのものの力が衰えたからではないですか!」  
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