天文10年(1541年)  5月 『海野平の戦い』

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   屋敷に着く。幸義が、 「策を立てるまえに、敵の状況を把握しとかないとならんな」 と、言う。  幸隆は頷く。 「俺は村上の陣地を偵察しよう。おまえは武田を見てこい。策を決めるのは、それからだ」 「いいでしょう」 「海野で頼れるのもお前くらいだ。どいつもこいつも他人まかせだからな……」  幸義の瞳は普段より強く光っていた。むき出しになっている敵愾心の焔なのか、それとも海野の行く末を憂いて悲愁を宿しているのか、幸隆にはわからない。 「父上もダメだ。いや、父上がアレだから、駄目になったんだろうな」 「そうでしょうか?」  と、幸隆はいちおう聞き返した。  
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