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屋敷に着く。幸義が、
「策を立てるまえに、敵の状況を把握しとかないとならんな」
と、言う。
幸隆は頷く。
「俺は村上の陣地を偵察しよう。おまえは武田を見てこい。策を決めるのは、それからだ」
「いいでしょう」
「海野で頼れるのもお前くらいだ。どいつもこいつも他人まかせだからな……」
幸義の瞳は普段より強く光っていた。むき出しになっている敵愾心の焔なのか、それとも海野の行く末を憂いて悲愁を宿しているのか、幸隆にはわからない。
「父上もダメだ。いや、父上がアレだから、駄目になったんだろうな」
「そうでしょうか?」
と、幸隆はいちおう聞き返した。
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