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それぞれの気持ち
その頃、午後からの講義である律は自分の部屋でボウッとしていた。
昨夜、和臣と言い争いをした。
(カズのバカ!すっかりと忘れやがって!)
去年の今日、和臣がここに引っ越してきた。
付き合っていた頃から泊まった事も多々あったが、今度からは違う。
四六時中、ずっと和臣と一緒にいるのだ。
それだけで律は天にも舞い上がる気分だった。
世間でいう『ハネムーン』を過ごせるかと思いきや、現実は違っていた。
まず第一に、食生活の相違。
和臣は家族と一緒に住んでいたので、しっかりとご飯を食べていた。
ところが、律は違う。
食べたり、食べなかったり。
しかも野菜ジュースとかゼリーとか簡単に取れるものから、レトルトパックを大量に買ってはレンジで温めて食べるという生活を五年近く続けていた。
そのため、律の中ではそれが当たり前だと思ったのだが違うらしい。
最初の夜にレトルト食品を用意すると、和臣が怒ったのである。
そして律の食べているものを聞くと、更に怒りを増した。
以来、和臣は実家に帰る度に母親から料理を教わったり、作り置きをしたおかずを持参して戻ってくる。
しかし、和臣が持ってくるおかずは和食の煮物ばかりで、肉が大好きな律にとっては物足りなく、不満を漏らした。
それが更に和臣を怒らせることになってしまったのは、いうまでもない。
結果、食事は和臣が担当し、その他は律が担当になった。
掃除と洗濯だけは徹底的に学んだからだ。
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