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記念日
「なあ、カズ。」
「何だ?」
「明日が何の日か、覚えているか?」
「知らん。」
夕飯を終えて、キッチンで食器を洗っていた春日和臣【カスガカズオミ】は、背後でテーブルの上を片付けている菅生律【スゴウリツ】に話し掛けられていた。
そして一言で返答をすると、律はピキッと固まった。
「マジで覚えていない?」
「全く。てか、手を止めてないで早く片付けろよ。」
食器を洗いながら、手が止まっている律に注意をする。
片付けを終えた後は、二人でレポート作成が待っている。
その作業を早く始めるためにも、早く片付けをしなければいけないのだ。
高校卒業後、和臣は律が住んでいるマンションに引っ越してきた。
いわゆる『同棲』だ。
和臣は『同居だ!』と言い張っているが、意味はなし。
二人が住んでいるマンションは、律の両親が彼のために購入したマンションなので、家賃は発生していない。
管理費と水道光熱費はしっかり掛かるので、和臣は半分出すことを条件に引っ越してきた。
学部は違うが、二人はK大学に進学。
和臣は文学部。
律は経済学部。
お互いに、夢のために学部を選んだのだ。
和臣は将来、書籍を扱う職業に就くため。
律は、父である貴之【タカユキ】の親友で、陶芸作家の狭霧右京【サギリウキョウ】の弟子になるための基盤を作るためだ。
陶芸家になるには、色々と大変であることを肌身で知っている右京が、弟子になるための条件として大学に行くことと就職して社会を体験することを提示した。
これらの条件を飲み、律は大学に行きながら右京の工房へ足を運んでは基礎を学んでいる。
その間、和臣は自分の生活費を稼ぐためにアルバイトを始めた。
大学に近い本屋で週三日のアルバイト。
最初は悪戦苦闘をしたのだが、今ではスムーズにこなしている。
書籍関係で働きたいと決めている和臣にとっては、最高のアルバイト先だ。
律も週三日には右京のところに行っているので、丁度いい。
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