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アンナ・マックリードは冷静を欠いていた。
いつもならとっくに帰って来ている時間になっても息子であるケインが一向に帰って来ないのである。
それだけなら大して問題では無いのだが、今日は違った。
いつもならちゃんと遅くなると連絡を入れる筈なのにそれすらない。
先に夕飯を食べて、夫がTVを観ていた時だった。
放送していた番組を切り替え、ニュースにした時、画面一杯に映し出されたのはビルの火災現場だった。
ニュースキャスターによると、先程工事中のビルに突っ込んだトレーラーが爆発、炎上したとの事だった。
その地域はここから歩いてすぐの所で、極めつけはケインの行きつけのアジトの帰り道であった事だった。
オロオロするアンナを見兼ねて軍人の夫が知り合いの救急隊員に連絡をつけてくれたが、情報は得られなかった。
なだめてくれる夫に大丈夫と告げてたもののずっと台所を歩き回っている。
そんな時だった、玄関のインターホンが鳴った。
電光石火の勢いで玄関に駆け付けたアンナはすぐにドアを開け放った。
『ケイン!』
『あ、ただいま母さん。』
『大丈夫!?怪我はな、い?』
アンナの眼が驚愕に見開かれた。
『その………アップルパイ、作れる?』
息子は、背中に少女を背負って帰って来た。
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