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そんな中、夕日の中を歩く二人に監視の視線を送る人影があった。
黒いスーツにサングラス、
"いかにも"な人物である。
『…………』
黒いスーツの人物はどうやら男らしく、視線に気付いていない二人を厳しい視線で射ぬいている。
男は、しばらく二人を見送った後、夕日の差し込む路地裏へと消えていった。
………
……
…
その時、ケインの父であるジョージの所に電話がかかっていた。
『そうか、とうとう飼い犬を出したか、ご苦労な事だ。』
ジョージは普段かなり無愛想である。
しかし今の彼はいつもに輪を掛けて不満気であった。
『いやな、ブリキの方はどうせスクラップにする予定だったから良いんだがな、"アレ"は少々手元に無いと落ち着かん。』
対して受話器から聴こえる声は、一見温和そうに聴こえるが、ジョージはその言葉に込められた真意を感じ取った。
眉間のしわが深くなった。
『何が聞きたい?』
『ほう?随分乗ってくるなホームズ君。何を推理したんだい?』
受話器の向こう側は随分こちらの神経を逆なでしてくるようだ。
『電気屋とピザのデリバリー屋の電話番号しか知らない奴が俺のスイートハウスに何のご挨拶だ?』
受話器から笑い声が聴こえる。
『面白いな実に、君とこんなに軽いトークが出来るなんて考えもしなかったよ。』
余程面白かったのか、笑い声がまだ聴こえる。
『いやなに、そんなたいそれた事では無いんだよジョージ大尉。』
笑い声が、止んだ。
『最近の君の近所の近況を知りたいんだよ、例えば…』
『身元不明の少女が保護されたり、とか…ね』
声が変わる。
冷たく、
深く、
暗い、
『…………知らんな。』
ジョージの声に、動揺は一切無かった。
『………』
『………』
沈黙が続く。
『迷子が気になるなら迷子センターに電話しろ。家はポリスマンでも無ければ福祉センターでも無い。』
『オーライ解った。邪魔したね大尉、今度何か贈るよ、お詫びにね。』
『それなら何か甘いお菓子を頼む。……息子がハマっててな。』
『はは、心得たよ大尉。それでは、また。』
電話が切れる。
ジョージは受話器を置くと深い溜息を着いた。
『さて、参ったなこれは。』
窓の外を眺める。
半分の太陽が、茜に世界を染めていた。
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