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その日の夜は、普段より無愛想なジョージと普段よりハイなアンナに挟まれたディナーを楽しんだ。
……
…
翌日、
ケインは朝から不穏な気配を嗅ぎ取っていた。
『おかしいな、』
窓から外を眺める。
先程からケインの視線を受けているそれはケインの家からすぐ近くの道に鎮座していた。
黒塗りの車である。
重ねて確認するがケインの父ジョージは軍人である。
ケインは幼い頃から有り余る好奇心を父へと向けた。
父から信虚様々な話を聞かされた結果、ケインは何故か"とある勘"が発達した。
すなわち危機を感じ取る勘である。
ジョージの話から学んだ対応策や元来の勘から、ケインは常に自然と危機を回避する様になったのである。
そのケインの勘が告げていた。
"何かおかしい"と。
黒塗りの車が一台停まっていた程度で騒ぐ事も無いが、ケインは見てしまった。
車とは逆の道から顔を覗かせた黒服の男を。
つまり、
『囲まれた?』
まさにバカバカしい話である。
普通ならば、
しかし、
ケインには動揺するに足る理由があった。
ノア
二日前に保護した身元不明の美少女。
その日その時に起きたトレーラー事故。
そして謎のCMS。
バカバカしい、
バカバカしい程に材料が多すぎた。
恐らく、黒服の連中はノアもしくは二日前の事故について張り込んでいる。
昨日ケインはノアと二人で普通の道を通って帰って来た。
目撃されていたとしてもおかしくは無い。
最悪、連中はノアを取り戻そうとするかもしれない。
最悪、強行手段に出てでも…
『ケイ~ン?朝ご飯よ、下りてらっしゃい。』
ケインは一瞬ビクッとしたが何とか落ち着いて、
『わかった。すぐいくよ。』
ケインは今だ胸中に燻る不安を抱えたままリビングへと向かった。
……
…
そして朝食後、ケインは食器の片付けにアンナが向かったのを見計らってジョージに話を持ち出した。
『父さん、ちょっと良い?』
ジョージはコーヒーを飲みながら頷いた。
『外にいる連中の事だけど、』
そこまで話して、ジョージは目つきを変えた。
『何人だ?』
『分からない、少なく見積もって三人、車は一台。』
ジョージはゆっくりと窓際に近付き、外を窺った。
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