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その少し前、
ケイン達はバイトが終わったデイジーと一緒にストリートを歩いていた。
『あんたら騒ぎすぎよ、アタシが店長にクビにされたらあんたらフクロにするからね。』
『ホントに口が悪いな、バーコードは一体何処に惹かれたんだ?』
ケインは首をすくめて
『さてな、少なくとも俺はインディアン並に勇ましい女にKOされたマゾヒストにもう一人心当たりあるぞ?』
同時に二人が殺気立った視線を向けた。
『ケイン?アタシは生まれも育ちもネオニューヨークよアフリカじゃないわ、ましてや家系に一人もネィティヴはいないわ。この場合インディアン並に勇ましい女って一体誰なのかしら?』
『おいケイン!マゾヒストってのは納得いかねえな。』
案外間違って無いのではないかとデイジーも一瞬考えた。
『まあまあ二人共、ここは穏便にすませよう…ぜ!』
ケインは言うや否や二人に背を向けて走り出した。
サイモンとデイジーはしばらく呆然とした後
『……あ、ちょっとケイン!待ちなさい!』
『くおらケイン!!俺をマゾヒスト扱いした報い、受けやがれ!』
猛然と追い縋る二人を尻目にケインはどんどん走る速度を上げた。
『馬鹿野郎ぅ!マゾヒストにマゾヒストっつって何が悪いんだよ!』
『んだとぉ!』
そのまま走り続けてしばらくたった。
いつの間にか大分走って来た事に気付いたケインは絶え絶えな息を落ち着ける為に休める場所を探そうと辺りを見渡した。
『はぁ…はぁ……おっスクラップ場』
と、眼が止まったのは他ものよりもかなり大きなスクラップ置き場だった。
家が近いのでサイモンやケインは小さい頃からここを遊び場としており、今でも良く遊んでいる。
ケインはそこの中にあるアジト(サイモンと二人で廃材を組み合わせて作った何気に傑作な代物)の中に入った。
入ったと同時に屋根を水が叩く音が聞こえだした。
『雨かよ、ギリギリセーフだな。』
雨は次第に強くなり、もはや土砂降りになっていた。
と、窓の外を眺めていたケインは不意に悪寒を感じて振り返った。
『………よぉ』
サイモンとデイジーがびしょ濡れで立っていた。
『あ~~……災難だったな?』
『覚悟は、』
『出来てるんでしょうねえ?』
一目散に逃げ出した。
と、雨も止まぬ外を走り抜けようとしたケインの後ろから
『ケイン!危ない!!』
爆音が鳴り響いた。
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