なんとなくパウダースノー

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
憂花が優奈じゃないなんて、いったい誰が決めたんだろう。 (なんとなくパウダースノー) 優奈にとって、あの冬は、未確認な愛情なんかを確かめるための季節だったんじゃないのかな。なんて僕は未だに思っているんだ。何故なら優奈は僕に、 「律くん、ほら見て雪だよ」 「…ん?…ああ」 「浮かない顔してどうしたのさ」 「いやぁ、まぁね」 「歯切れ悪いなぁ、まったく」 「ごめん」 不意に、降り始めた雪はさりげなく、今年になって初めての雪だった。憂花が失笑して空を指差す。 「優奈なら、もう、居ないんだからさ」 「……そっか」 「そうだよ、律くん」 はらりはらりと降りしきる、真っ白な粉雪は、僕の身体にも付着した。真っ白なマフラーに溶ける。 「まだ、忘れないんだね」 「無理だよ」 「私だって、好きなのに」 「誰を」 「律くんを」 「このマフラー」 「え」 「これ、優奈のだから」 「うん」 「憂花に預かっていて欲しい」 「うん」 「僕、やっぱり進学するよ」 「……うん」 悪い予感はあたるもので、僕を好きだなんて言うから、もう憂花とも一緒には居られない。 だって憂花は憂花なのに、僕にはそうは思えないんだ。 どうして憂花は優奈じゃないんだろうなんて、空恐ろしいことを考えてしまう。 「私のせいだよね」 「違うよ、優奈のためだ」 首を振ると、ため息が聞こえた。 「律くんってば昔から」 「昔から」 「笑えるくらいに無神経」 苦笑して、マフラーを首に巻いた憂花。僕は学生鞄を揺らした。 「ごめん」 「律くんは、やっぱり強いな」 「何が」 「泣かないんだね」 僕の右手に力がこもる、学生鞄を取り落とさないように、と。 「……まぁね」 くすりと笑う。つくづく君は、優奈に似てきたよ。 (なんとなくパウダースノー) 君が君であることを、忘れてしまいそうになるんだ。 律樹 リツキ 18歳♂ 憂花 ユウカ 17歳♀ 優奈 ユウナ 享年16歳♀
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!