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水槽のエアーポンプの音だけがやけに煩い。殺風景な部屋には君が必要なんだ。
俺は悪夢と同じように君を探しに家を這い出た。
トマトのように真っ赤な鳥居をいくつもいくも、くぐり抜けてゆく。遊園地の廃墟にも君は居ない。
ビニールばかりのゴミの山を蹴散らす。街中の珊瑚礁にも君は居ない。
唐草模様の冷蔵庫の群れをなぎ倒す。南極にも北極にも君は居ない。
瓦礫に埋まりながら見る夢は幸せだろうか。瓦礫の全くない空き地で空を見上げた。
まず、俺の頭上に影が落ちてそれから一斉に埋め尽くした。ついでに一番星は全部降り注いだ。
辺りが黄色に降り積もった時にやっと目が合った。
長いまつげは君のチャームポイントで、沢山のウロコは君の証明。体は赤く無いけど、心配はいらない。赤いペンキもラッカーも倉庫にある。
「帰ろう」
俺は両手を広げて、空を埋め尽くす程に巨大な君を愛おしく思った。
金属と金属が擦れあって軋む音が雨のようにピリピリと、積もりに積もった星を押し流していった。
ブリキの金魚は空を一かきで俺に飛びついて来た。
「永遠に愛してるよ。」
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