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「広い……」
――手を引かれて入った先は、大岩の中とは思えないほど広かった。
壁はコンクリートだろうか。
……しっかりと作られている。
質素な作りだが、どことなく安心感があった。
「なぁ、何なんだここは?」
さっきの事といい、まったく理解不能。
「ここは私の隠れ家だ」
そう言うと、座れ、と言って椅子を指差す。
……その前に色々聞きたいことがあったのだが、黙ってそれに従う。
「さて、この世界の事だったな」
レオは向かい合って座ると話を切り出した。
「この世界は魔界。悪が治める世界だ。」
「それなら俺も憶えている。悪はいつも恐れられそして尊敬される存在だったはずだ」
「そう、そして力をもたない者は力をもつ者に支配される。弱肉強食が日々繰り広げられていた」
「まあ当たり前だろうな」
「そして罪を重ねていった者は“咎人”と呼ばれていた」
「っ!!」
「ん? どうした?」
「あ、いや、なんでも……」
何か変な感じがしたが……
……気のせいか?
「続けるぞ。咎人はたまに魔神に認められ、その者が死んだら悪魔として転生することを許される。お前はその中の一人ということだ」
「その時に記憶を無くす事はないのか?」
「さぁ? 私はまだ人間だからな。しかしそういったケースは聞いた事がないな」
「そうか…、ならば記憶を取り戻すこともできるんだな?」
「まぁ可能性はあるな。」
レオはそう言ってまた煙草を一本取って火を着けた。
「さて、この世界は一番強い者を“魔王”と呼ぶ。魔王にはこの世界を治める権利を与えられる。」
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