全てのハジマリ

2/17
1055人が本棚に入れています
本棚に追加
/1347ページ
――洞窟を歩いて何時間経ったのだろう。 あそこから少し進んだ所から明かりがあり、無駄な体力を使わずにすんだ。 ……しかし一向に出口が見つからず、着々と体力を消耗していく。 「腹減った……」 誰に訴えかける訳でもなく、一人ごちながら少しひらけた場所に倒れ込む。 「このままだったら外に出る前に死んじまうな……」 記憶無くして、誰にも出会わないで餓死……? ハハハ、笑えねー。 ……冗談じゃなくマズイな。 せめて草でも生えてないものか……? い、いや、別に草じゃなくてもいい。 食べられるなら虫でも、骨でも、なんでもいい。 贅沢は言わないから、せめて食料を…… 「……ん?」 ふと、目に入った何か。 足元らへんに何かある。 「……!? ま、まさか……!」 あれは……パン!? おお!! 神のお恵みか!! ……い、いやまて!! こんな場所にパンなんて落ちてるはずがないだろ!! 幻覚だ……腹が空きすぎて幻覚を見てるんだ……! そうだ、幻覚だ! だってご丁寧に湯気まで出てるし、美味そうに焼き上がってやがるもん! ……し、しかし本当に幻覚か? ほら、なんかこう……香ばしい匂いもするし…… も、もしかしたら本物かも…… 『空腹に負けないで!! これはお約束の展開だよ!!』 おぉ、俺の心の中の天使。 『いやいや、ここは食うべきだろ。もしかしたらもしかするかもしれねぇし』 今度は悪魔か。 くっ……、俺はどっちを信じれば……! ……って、俺悪魔じゃん。 悪魔は悪魔の指示に従わないと♪ 「よっ」 体を起こしてパンを手に取る。 ……ん? 心なしか堅いような……? いやいや、気のせいだろ。 いただきま~…… 「―――ヤバい。変なのを見つけてしまった」 「……す?」 【ガキッ!!】 「う、うがあああぁぁぁぁ!?」 い、痛い!! やっぱ石だったし!! あ~、畜生!! やっぱお約束の展開か、これ!! 「……本当に危ない奴を見つけてしまった」 「……ん?」 さっきも聞いた声。 声がした方向を向くと……人が。 ローブを着た、人間。 顔はフードに隠れていて見えないが……女? 輪郭細いし、胸らしき膨らみも見える。 ……デカい。 あ、そうじゃなくて、 「何か食べ物下さい!」 「な、なんだぁ!?」 ソッコーで土下座して、お恵みを求めた。
/1347ページ

最初のコメントを投稿しよう!