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……色々言いたかったが贅沢は言うまい。
助けてくれると言うのだから黙ってついて行こう。
「そういえば名を名乗っていなかったな。私はレオ・アルバ、研究者だ」
研究の為にこの洞窟に来た、とこいつは言う。
……こんな洞窟に研究素材となるがあるのだろうか。
「――お前、何も憶えて無いと言ったな?」
「ああ、名前も思い出も全てな」
レオにもらった、決して美味くはない携帯食料を口に運びながら答える。
……いや、まてよ?
名前は確か……ええと。
「う……!」
頭痛。
けど、さっきよりは軽い。
……そうだ、思い出した。
「……シュラ。俺の名前は、シュラ」
――そう、シュラ。
たしか、そう呼ばれていたはずだ。
……誰かに。
「シュラか。よろしくな、シュラ」
レオは握手を求めて来た。
それを無言で握り返す。
「記憶喪失、か。お前の失った記憶は、俗に言うエピソード記憶だろうな」
「エピソード記憶?」
「ああ。思い出など、一般的な知識以外の特殊な記憶だ。それだけを失ったから、お前は知識を覚えてるんだろう」
「ふ~ん。ちなみに逆だったらどうなるんだ?」
「赤子と同じになる。言葉も話せないし、何も理解出来ない」
……うわ、それは嫌だ。
もしかしたら不幸中の幸いだったのかもしれない。
「それよりもどうやって外に出るんだ? そろそろ出口についてもいいんじゃないか?」
こいつについてきてからもうけっこう経つ。
……道を知ってるのならもう着いてもおかしくないのだが。
「出口? 出口は見つけるんじゃなくて、作るんだよ」
レオはそうおかしな事を言うと岩肌が平らなところで止まり
「ここら辺か……」
そう、呟いた。
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