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「…はあ」
もう何年も前に潰れた雑貨屋の軒先で、生駒は深いため息をついた。
夕方突然降り出した大雨から逃れてもう一時間、ずっと立ちっぱなしだ。
恨みがましく空を見やり…表情を暗くする。
…普段なら雨に濡れるのなんてどうって事ないんだけど。
ちらり、と脇に抱えた鞄を見る。いつも雨の日は雨よけとして使うこの鞄、今日は中に古びた本が入っている。生駒の好きな推理小説作家の本。
勤めている会社で、昼に上司に借りた物だ。今では絶版で手にはいることが無く、頼み込んで貸して頂いた。
そんな本を、もちろん雨に濡らすわけにはいかず。
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