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「でも、本当にいいのか?今ならまだ取り消せるんじゃないのか?
そんなもったいないこと」
「いいよ。もう決めたことだし」
「・・・ありがとな」
「・・・うん」
「あと、皮肉ってごめん・・・」
「・・・うん」
少し怒っているのか、それとも恥ずかしいだけのか、ミレイユは目を合わそうとしなかった。
俺はさっき彼女にあんな酷いことを言ったことに後悔した。
彼女は芯から優しい人間だった。
恋心を抱いている訳でもない俺に対しても。
その優しさは過去の何かが影響しているかはわからないが、ミレイユが俺の事を想って取り消しをしたのには変わりない。
出会ったばかりの自己中心な男一人のために、ほかにない大チャンスを捨てたのだ。
「こりゃ、借りができたな」
「借り?なんで?」
そういって軽く首を傾げる彼女。
全く彼女には頭が下がる。
俺は彼女の肩に手をおいて言った。
「年末の昇格試験。
絶対一緒に受かろう!」
その言葉に彼女はただ、ニコリと笑うだけだった。
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