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「・・・・アレン君が親を亡くしたのはいつ?」
ミレイユの先程と比べ若干弱い声に、俺のスプーンを持つ手が静止する。
いつだったかな、正直言ってあんまり思い出したくない。
まぁ実ははっきりくっきりと覚えてるけどな。
「俺の六歳の誕生日だ」
確かな事だけを伝えてミレイユを見る。
彼女はというと誕生日という意外なワードに言葉が息詰まっている様子だった。
ミレイユはそれから少しの間、俯き首を傾げていた。
そしてまた弱いトーンで話しはじめた。
「私は三歳の頃。
まぁあんまり覚えてないんだけど・・・・」
無理に笑う彼女を見るのが少し辛かった。
いくら同じ境遇の者同士話すといっても、気が楽な訳ではない。
全く、『ここ』の施設のやり方にはあまり共感できない。
「そうそう」
考え込む俺を横目に口にカレーを入れながらミレイユが明るい声と共に人差し指を立てる。
「今日、抜き打ちの昇格テストあるらしいね」
抜き打ちテスト。
果たして生徒にバレている時点で抜き打ちの意味を成しているかはわからないが、種目が分からないという点においてはやはり油断できない。
思わず俺は問い掛ける。
「何人上がる?!その試験で」
んー、とカレーを咀嚼しながら問いに答えようと考える彼女。
数秒後、彼女の口は何のためらいもなく開かれた。
「思い出した。
男女各一人ずつだったよ」
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