3.暴漢
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ふと、男の動きが止まった。 口を手で塞がれる。 霞む意識の中、耳を澄ますと微かに足音が聞こえた。 誰かが工事現場の横を通り過ぎようとしている。 「――んんっ!」 思わず杏璃は声を上げた。 殴られたっていい。 「――助けて――!」 塞がれた口では殆ど言葉になっていなかったが、それでも悲鳴に近い声音で杏璃は叫んだ。 それは静まりかえったその場所で、良く響いた。
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