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車を走らせていた悠河は、先ほどまで助手席に乗っていた女のことを考えていた。
――山道を歩いて帰ろうとしていた、あの女性だ。
車のライトに照らされた時はワンピースだけが浮かんで見え、情けないことに一瞬胆を冷やしたが、電灯の下で見る彼女は可愛らしかった。
白くて華奢な首筋にそそられる。
それに柔らかな物腰が好印象だったし、自分の周りには今までいなかったタイプだ。
自分の事をあそこまで警戒していなければあのまま帰すつもりはなかった。
格好をつけて連絡先を教えなかった自分に今となっては腹が立つ。
「――くそっ」
悪態を吐いてふと見た助手席のシートに、見慣れぬ携帯電話があった。
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