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杏璃は顔を上げ、男を見やった。
暗くてよく見えないが、30歳前後だろうか。
だとしたら恋人の鉄二とさして変わらないが、話し方や物腰は彼のそれよりもずっと落ち着いて感じる。
「歩いて帰ろうとしていたのか?」
不意に男が言った。
男の顔を見つめていた杏璃は目があった気がして、慌てて俯く。
暗くて相手の顔立ちまで良く分からないのだから、目があったかどうかも定かではないが。
「そうね……」
呟くように答えた。
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