2.エレベーター

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私はあの日以来、極力エレベーターには乗らないようにしています。 仕方なく乗るとしても、絶対一人では乗りません。 目的階が10階だとしても、一人だったら階段を使うでしょう。 私がエレベーターに乗れなくなってしまったのは、中2の夏の出来事のせいです。 当時私はマンションに住んでいました。 13階建てのマンションで、2階に住んでいました。 2階に上がるためにわざわざエレベーターなんてほとんど使っていませんでした。 ちょっと登ればすぐ2階です。 それに、たいていエレベーターは4階か5階に止まっていて、下まで降りてくるのを待つ気にもなれなかったのです。 しかし、あの日の私は部活で疲れきっていました。 私は迷うことなく、エントランスからエレベーターに向かいました。 その時エレベーターは4階に止まっていました。 私は上ボタンを押してエレベーターが降りてくるのを待ちました。 エレベーターの厚い扉のわきの壁には、液晶画面が埋め込まれていて、画質の荒い映像を流しています。 私はぼーっとその画面を見ていました。 画面にはエレベーターに設置されている、監視カメラから送られてくる映像が映っていました。 中には若い女の人が乗っていて、エレベーターの後方の鏡でメイクのチェックをしているようでした。 私は「綺麗な人だなぁ」と思いながら画面をずっとみてました。 間もなく、エレベーターが1階につきました。 私は画面から目を離し、今度は実物を見ようとエレベーターに目を向けました。 「1階です。」とアナウンスが流れて、エレベーターの扉が開きました。 そこには、鏡にポカンと写っている自分しかいませんでした。 女の人は、いませんでした。 1階に到着するまでの間、エレベーターは一度も止まっていません。 その日以来、私は怖くてエレベーターに乗っていません。
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