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今日も授業の終わりのチャイムが鳴った。
いつものようにサッカー部は突進する闘牛のように教室を出て行った。
僕はいつものように教室を最後に出る。別に最後が好きな訳ではない。
ただのんびりとした性格がそうさせるのだ。
僕は3人兄弟の末っ子で三男坊。
上の二人の兄は運動、成績、容姿抜群。野球でいうと、走・攻・守三拍子揃った最高の選手といったところだ。
それに比べて僕は運動神経はまるで無いし、頭も決して良い方ではなく、容姿も褒められた事はなかった。
趣味は散歩と学校の帰り道に見る星くらいでとても内気な性格をしていた。
中学時代は優秀な兄に比べられ、どこにいても兄の話をされていた。
ただ、僕は兄を嫌っている訳ではない。
元々明るい性格の兄は僕の相談を明るく的確に解決してくれたり、遊びに連れてってくれたり…。
正に理想の兄。僕はそんな自慢の兄が好きだった。
ただ嫌だったのは兄と比べられる事。
僕の存在が消されるようで嫌だった。
だから僕は兄と違う高校を選んだ。
と言っても、兄と同じ高校に入るには、僕には東京大学に入るよりも難しい事のように思えたからという理由もある。
田舎の高校で偏差値もさほど高くは無かったが、僕はギリギリ合格した。
あれから入学してもう1年の月日が流れていた。
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