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とうとう、先輩と目線を合わせる事なく、部活が終わってしまった。
部活が終わると、後は個人練習へと移る。僕は毎日100射以上うっていた。
僕がうつ前に巻き藁で練習をしようとした時に、急に先輩から呼び止められた。
「ちょっと、話しがあるの…。」
僕の心臓はバクバクしていた。
僕は改めて先輩の口から告白が聞けるのか、とか、みんなの前だと恥ずかしくて話せないのかな、などなど様々な事を想像した。
「ここだと話し辛いから、ちょっとこっちへ来て。」
連れて来られたのは野球のネット裏のちょっとしたベンチ。
「ここに座って…。」
外はとても寒かった。
雪がチラチラと降り出していた。
暫くの間、重い沈黙が続いた。
寒さで手がかじかんできた。
弓道の練習の時は、基本的にジャージか袴。ほとんどの人は試合が近くない限りジャージで練習していた。
真冬の寒さにジャージで上に何も羽織らずに来たのでさすがに寒かった。
先輩も僕も寒さで顔が赤くなってきた。
僕はその時点で何か嫌な事を言われるのでは無いかと予感していた。
先輩が何か言いたそうにしていたがなかなか言い出せずにいるのがよく分かった。
沈黙に耐え兼ねて最初に言葉を発したのは僕の方だった。
「寒くないですか?」
その一言にも先輩は首を振るだけだった。
「何か上に羽織るもの持って来ますね。」
そう言って部室に向かおうとした時、先輩にジャージの裾を掴まれた。
「すぐ終わるから大丈夫。」
すぐ終わるから…。その一言で僕の嫌な予感は確信へと変わった。
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