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そして、遂に先輩が話し始めた。
「ごめんなさい。」
僕には、今、その言葉は世界で一番聞きたくない言葉のように感じた。
「あのメールは私が送ったんじゃないの…。」
「…………。」
僕は何も言えずに俯いていた。
「本当にごめんなさい…。」
「…………。」
「あなたと付き合うとか考えた事ないの…。」
「昨日友達が家に遊びに来て…。私がいない時に勝手に送ったの…。」
「本当にごめんなさい。」
僕はショックで今にも泣き出しそうになったが、なんとか堪えて何か話さないといけないと思った。
そして、お腹の奥底からなんとか声を絞り出した。
「………。そうですか…。なんかおかしいと思ったんです。」
一言声が出ると、次々に頭に浮かんだ言葉が口から飛び出して行く。
「初めからおかしいと思っていたんです。こんな僕と仲良くしてくれて…。」
「人生そう上手くはいかないもんですよね。」
不思議な事に涙より先に笑顔が出て来る。
悲しいはずなのに僕は笑っていた。
その笑いに先輩は驚いたような悲しんでるような表情をしていた。
「僕は全然気にしてないんで大丈夫です。」
「本当にごめんなさい…。」
先に泣き出したのは先輩の方だった。
僕はずるいと思った。
本当に泣き出したいのはこっちなのに…。
それに泣かれたら怒る事も泣く事も僕は出来なくなる。
ただ笑うしか選択肢が無くなる。
「本当に大丈夫ですから。僕の友達が僕を探していますよ。こんなとこ見られたら僕が悪役になっちゃうじゃないですか。早く、部室に戻った方がいいですよ。」
多分、声が震えていたと思う。
その言葉を聞いた先輩はうなずいて部室に戻っていった。
雪の粒が大きくなって来て積もりだしてきていた。
こんな状況でも、なぜか僕は笑っていた。
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