あるのは貴方へ紡ぐ言葉だけ

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貴方は泣きじゃくる私の話を聞いて頭を撫でてくれました。 私はその優しさにどうにも気持ちが止まらなくて。 貴方に抱きついてしまいました。 会社には二人だけでしたから貴方も優しく抱きよせてくれましたね。 ポンポンとお母さんのように気持ち良く叩かれた背中で。 その時、背中の感触で気付いた物は、貴方の薬指につけられた指輪でした。 私はまた涙が溢れてきて。 なんでこんな気持ちを私は持っているのに。 この人は私を抱き締めているのに。 なんでこの人は私の手に入らないのだろう。 なんだか仕事で失敗した事より、もっと早く貴方に出会えなかった事の方が失敗だと思いました。
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