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どうしても言えなかった気持ちを言葉にしてみた時、君はとても柔らかく笑った。その表情に見とれていると、両端が上がっていたはずの唇に、ぐっと力が入った。 急に変わった様子に驚いて、理由を訪ねようかと思ったその時、今度は透明なものがツッと一筋落ちた。僕は動揺を隠すことができなくて、あとからあとから溢れてくるそれを、拭ってあげることもできなかった。目元に、頬に、指先で少しだけ触れるだけでいいのに、それすらできない。彼女に触れるということに怯えたのだ。拒絶された僕が、そんなことをしていいわけがないと。 僕はとても臆病で、そんな勇気もない人間なんだ。 彼女が微笑んだのは一瞬で、僕がほっとしたのも嬉しかったのも一瞬だった。 泣くぐらいに嫌だとしたら、どうしてあんな顔を見せた? 一瞬だとはいえ、喜んでしまった僕は馬鹿みたいだ。 「やっと言ってくれた」 涙も尽きてしまったのか、落ち着きを取り戻した彼女が口を開いた。ずっと待ってたと続けて、笑った。 「えっと……よく分からないんだけど」 「いつ言ってくれるのかなって思ってたの」 「……どうして?」 「ずっと好きだったから……あなたのこと」 もしかしたら今好きって言った? 僕のことを……? ───嘘だ。だってそれじゃあ、どうして…… 「どうして泣いたの?」 「ずっと聞きたかった言葉をやっと聞けたから……」 ───どうやら僕は本当に本物の大馬鹿だったようだ。でもだって、どうやったらそんなことを思える? あんなにも焦がれた君が、僕と同じ気持ちだったなんて。 信じられないという驚きと、嬉しい気持ちが胸を打ち続けてる。君の言葉が真実なら、さっきの涙は感涙ということに…… どうしよう、そんなことってあるのか? 地獄に叩き落とされたと思ったのに、今は天にも昇る気分だ。なんだかよく分からなくなってきた。 嬉しい、嬉しい、嬉しい。だけど言葉になんてできない。今の気持ちを表現することは難しすぎる。
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