61人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
そんな僕の頬を暖かいものが包み込んだ。君の手は冷たいけど、暖かい。ふんわりと柔らかい君のてのひらが、心地良くて。だけどとてもどきどきする。
その時、君の姿が揺らいで見えた。
「どうして泣くの?」
「……え?」
じゃあ揺らいで見えたのは、僕が泣いていたから? でもどうして泣く必要があるんだ自分。
「あ、いや……」
振り払うように、手から逃れた。後ろを向いて腕でごしごしと、気づかないうちに溢れていたものを拭う。
……きっと、嬉しかったからだと思う。表現できないほどの喜びが、涙となって溢れてしまった。
だけど仮にも男の僕が泣くなんて、不覚にも君の前で。
「可愛いなあ……」
背後から不意に聞こえた声に耳を疑う。何だって? 今可愛いって言ったのか? 何が。
振り返ってみると、君はくすくすと笑っていた。
「あなたも嬉しくて泣いたんでしょう?」
可愛いなあ、いとおしいなあと、僕を見ながら何度も呟きながら目を細める君が、悔しいけど……たまらなく綺麗だった。
たった今、気持ちが繋がったばかりで、恋人という関係になった君を……抱きしめたい、口づけたい。
そんなことを思っても、すぐに行動できない臆病な僕は、情けない。そんな僕を見てまた、君はくすりと笑った。
恥ずかしくて情けない自分を、見透かされているようで……カッと顔が熱くなる。
最初のコメントを投稿しよう!