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白い砂以外に何も無い場所。天国でも地獄でもない世界。
そこに、黒い影が1つ。
零。
ただっ広い空間を、ただただ見ていた。
すると砂の中から出てきた小さな生物が零に寄り添った。
零はそれに触れようとしたが、すんでのところで止めた。
生物も再び砂に潜ってしまった。
「やぁ零。」
「ハンプティか。」
いつの間にか背後に現れていたのは零とは正反対の真っ白な姿をした、名はハンプティ・ダンプティ。
零と同じ様に生まれた存在。
「…触れるのが怖いかい?」
「……うん。」
零は"壊す"事を与えられた存在。
何かに触れるのが怖いのだ。…壊してしまいそうで。
故にこんな何も無い場所にいる。
「ハンプティ。」
「何だい。」
「神は、何故私を創ったのだろう。」
砂に円を描きながらハンプティに尋ねる。
ハンプティは零と背中合わせに座る。
「私などいなくても神はあらゆる物を壊す事ができる。この世を壊す事すら。私など、必要ないじゃないか。」
「だからじゃないかな。」
円が、ズレた。
「いつの間にか神様という存在で。世界を生み、自分の手で終わらせる事ができる。でもそんなの滑稽で、傲慢で、哀れで、虚しくて……。
そこで壊す存在を…君を創った。
君は神様の弱さから生まれたのさ。同時に神様を救う存在。」
ま、神様じゃないから分かんないけどね。と、付け足す。
「…ハンプティ。」
「んー?」
「すまない。」
「…いいえ。」
しばらく2人は無言で座っていた。
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