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結局零を抱えて地獄に逃げて来た。
零は既に再生を終えている。死神の攻撃を喰らってもこの再生力。
見た目はただの子供。しかし能力はこの世で最も恐ろしいものを持っている。神もこんな子供の姿に造るとは趣味の悪い。と、顔を覗きこんでいると突然起き上がった零の頭が鼻にぶつかる。
悶えるベルゼブブと、辺りを見渡す零。
零はポカーンとしている。
「ッ、勘違いすんじゃねぇぞ。」
「何が……?」
「あ?!何がって…」
馬鹿なのか?天然なのか?
言葉に詰まっていると、何がだと訊いてくる。
「何でもねーよ!」
面倒臭い。
立ち上がり何処かへ行こうとすると零も着いて来る。
着いて来るなと言えば何でだと訊いてくる。
いちいちムカつく。
本人は純粋に訳を訊いてるだけなのだろうが、こちらからすれば嫌がらせに近い。
尚も着いて来る零にベルゼブブはついに痺れを切らせた。
「テメェ、俺達に何したか分かってんのか!?」
「あぁ。」
あっさりと答える零にベルゼブブは驚愕した。
こちらからすれば同胞達を地獄へ落とした憎むべき存在の一人。なのにコイツときたら何の悪びれもなく着いて来る。
……思えばさっきから零は無表情のままだ。
馬鹿だとか天然だとかそういう問題じゃないとベルゼブブは思い始めた。
感情が貧しいのだ。
だからさっきから何故だ何故だと訊いてくるし、着いて来る。
分からないから。
ベルゼブブはその場に座った。零もその場に座る。
またベルゼブブをじっと見ている。
「…何で、俺を助けた。」
「分からない。」
「考えろ。」
零は首を傾げる。
しばらくベルゼブブの顔を見てたが、零は考え始めた。何故あの時排除すべきベルゼブブを庇ったのか。
考えた。だが考えたところで、考える為の材料が無い。答えは変わらなかった。
「………分からな、い。」
『そうか』と言おうとした時零が言葉を続けた。
「体が動いてた…壊したくないと思った…。」
それが精一杯の回答だった。
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