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「わ、分かった分かった! 俺が悪かったから、早く行こうぜ!?」
「うん…」
俺は委員長を促し、俺だけ落ち着かないまま帰路に着く。
学校から寮までは、そんなに遠くない。が、途中にある商店街を通って帰ることにした。たまに一也と買い食いしながら帰ったりする。何もないところを通るより、商店街を通った方が話す材料があるし、周りに人もいるから2人っきり感が薄れるはずだ。
そんな配慮を知ってか知らずか、委員長はあちらこちらのショーウィンドウを覗きながら喜んでいる。
「ねぇねぇ圭吾君! これ見て、可愛いの~!」
「あぁ~、うん。そうだなぁ~」
委員長が見てと言ったのは、小さなクマのぬいぐるみだった。女の子から見れば、委員長の様な反応をするんだろうが、生憎と俺は男だ。ぬいぐるみには興味がないから、思わずぶっきらぼうな返事をしてしまった。
「あ、コッチのウサちゃんも可愛い~! いいなぁ…」
「なぁ、委員長。そろそろ……」
「いいなぁ、可愛いなぁ…」
「………」
……まずい。
委員長、動かないんですけど……。
多分、このまま放っておけば、彼女はずっとこうしているだろうし、無理に離そうとすると、また泣きそうな顔をされるだろう。
一番いい方法は……。
「…か、買ってやろうか…?」
「え!? いいの!!?」
「あ、あぁ……そんなに高くなさそうだし、一個くらいなら…」
「やったぁ~っ!! ありがと圭吾君! 大好き!」
「ど…どういたしまして……?」
俺が一言そう言っただけで、委員長の眼は爛々と輝き、見えるはずのない尻尾をブンブン振り回しているように思えた。
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