4人が本棚に入れています
本棚に追加
店の中には、クマやウサギの他に色んな動物のぬいぐるみがあった。手のひらサイズの物から、漫画でしか見たことのない何かデッカいのもある。
「どのくらいの物だったら大丈夫なの?」
「う~ん…こんくらいかな」
委員長に買ってもいい値段を訊かれ、すぐ側にあった手のひらサイズのクマのぬいぐるみを手に取り、そう言った。ショーウィンドウの中にあったものと同じやつだ。
「じゃあ、それがいい」
「…え? 別に他のでも構わないんだけど…?」
「選ぶのはアタシなんだから、いいでしょ?」
確かにそうだし、別に文句はないからいいけど、あれだけアッチも可愛いコッチも可愛いとか言ってたわりには、随分といい加減な決め方だな…
「それじゃ、一緒に買いに行こ?」
「一緒に!? …勘弁してくれよ」
「嫌、なの…?」
「…分かりました。行きます……」
「やった!」
ここまでくれば、言わずもがな。本日三度目だ。
俺はニコニコ顔の委員長と二人で、クマのぬいぐるみをレジに持って行く。周りのお客に、俺達はどう写っているのか、なるべく考えたくない。
「…すみません。これください……」
店員さんに商品を出し、千円札を渡してお釣りを受け取る。クマはそのまま委員長の手に。
「本当にこれで良かったの?」
「うん。これじゃなきゃダメなの」
「ならいいけど…」
店を出てから、俺達は商店街を抜けた。心配してたほど沈黙は流れず、普通に会話しながら夕焼けの道を歩いた。
「じゃあ、俺こっちだから」
「うん。ぬいぐるみ、ありがとね。…圭吾君て、やっぱり優しいね」
「一也には薄情者呼ばわりされたけどな」
委員長は可愛らしく笑う。俺もつられて、短く笑った。
最初のコメントを投稿しよう!