未知現世の生徒会

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「重要な任務を課せられた人が、そのような調子じゃ困ります」 奥からこちらに姿を現した人物は整った顔に眼鏡をかけており、なぜか顔の右半分に黒いベールのようなものを纏った、癖毛のショートヘアーの女子だった。 廊下から差す生ぬるい光を浴びてベールの先に薄く浮かぶその右目は、俺を直視するのを拒んでいるかのように見えた。って、何を言ってんだろうか俺は? ふぅ、と少女が何か含んだ吐息を漏らす。 しかしこいつは…生徒会の人物か?胸の校章は1年……俺と同じ学年のもののようだ。 次に思考を回したのは、 『重要な任務』───? まさかこの設計図のことを言っているのか? 確かに怪しげだが、この配達が重要などと修飾されるまでに成り上がった任務には到底思えないぞ。 ひたすら疑問符ばかりが脳内を駆け回る中、 気づくと目の前にその少女はいなくなっていた。思わずまぶたが微動する。 少女はしかし、背後にいた。影を見て確認できた。 「えっ、ちょ……!」 咄嗟の出来事に反応できた俺自身にも驚いたがそんなことに脳内処理を割く余裕もなく、振り向くとその少女の大きく見開かれた左目があった。そして両目から明らかな殺意が感じられる。 「見た…?」 俺の首を強靭な五本指が挟む。頭の血の気が引いていくのを明確に感じられる。 「見たって……な、何を…!?」 俺の首の筋肉が抵抗して不気味に振動する。こいつ…握力が半端じゃ───! 「ウィング=ディ──」 これ以上はまずい!とてもじゃないが意識が朦朧として──── 「ちょっと。何、口走ろうとしてるの」 その時、失われつつある意識と共にその機能を着実に落としていく俺の聴覚は、それでも部屋の奥の闇からかかるその別の声を感じ取ることができた。 「それを言っちゃ本当に巻き込むことになるでしょ」 その言葉に目前の少女はベールの向こうから一瞬音を漏らしたが、やがて悪魔な右腕をゆらりと落とし、俺と同じく部屋の奥の闇に意識を向けた。 「な……んだ…?」 今の俺は3文字を絞り出すのにすらありったけの呼気を要し、鼓動もありったけの速度で波打っている。 しかし俺は目の前の少女に気を向けつつも、なんとか後退しながら首と眼球を少しずつ背後の声の方へと向けてみた。 そしてその姿を捉えた。
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