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深淵のような部屋の奥の空間から俺らと同じ光を受けて現れた長髪の少女。
少々命令調のかかっていた言い方からして生徒会長だろうか?だが、こちらも校章を見る限り1年生だ。
その姿を確認して一歩下がり反省の意を示す眼鏡の少女。
細めて向けられた、会長と思える少女の眼は畏怖を放って、そして不機嫌エナジーを込めた光線をこちらに突き刺しているのが伺える。
「貸しなさい」
すると不意な一言で、
俺の汗ばんだ右手から丸めた紙が消え失せ、代わりに会長の右手に渡った。
「は!?おまっ、いつの間───!」
焦りのまばたきと共に不機嫌少女が睨む。そして間髪入れず「ん」と、これまた不機嫌気味に喉から短い声を発し、俺の頭を指差した。
何らかの指示を俺の背後の眼鏡少女へと出したようだ。
「確認……検索しています、会長」
それに対して眼鏡女子が従う。確認って、さっき指を差した位置からして俺の頭の中を…か?まさか。
「この人、見ていますね」
「そう。その様子じゃ、手遅れね」
輪ゴムを外してざっと設計図を見渡す会長。
待て待て!何のことだ手遅れって!置いてけぼりにされちまった……。
状況を忘れて一人焦っていると、
「いいよ会長、人間一人の保護くらい」
またもや新登場の声が部屋の奥から響く。
男の声だ。会長の後ろに見えるうっすら見えるシルエットは柔らい輪郭をしている。話が通じそうだな。
「海留、そんな軽く言えることではありませんよ」
眼鏡女子に海留と呼ばれた少年の足音がこちらに迫る。
保護?こいつらは何の話をしているんだ?さっぱりだ。危険な香りこそするが。
「そう、危険なんです」
「えっ?」
危険という単語を復唱されたゆえ驚愕の色を顔に出してしまった。
俺はこの眼鏡少女に心を読まれたのか?気づいたらこいつ、俺の背中を人指し指でなぞっちゃいるが、そんなんで心読めるなら今頃俺は愛のキューピットにでもなって楽しんでいるさ。
何が、どーなってる?背後に瞬間移動するし設計図は一瞬で奪われるし!
「立ち話も難だからこっちに座って話そう?」
海留少年の柔らかな声が暗闇に響き、会長もそちらを向いて、腕を組んでふんと鼻を鳴らし、眼鏡少女の方も同意したのか、中指で眼鏡を押し上げた。
話すって…?
物は渡したし、さっさと帰りたいのだが。
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