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「確かに少年は変ですね。あなた、名前は?」
「あぁ、俺は真島境夜」
「では真島さん。あなたはアレを見たのですか?」
あれ、あなたの名前は教えてくれないんですね。
それと、『アレ』を使うな!余計わけが分からない!
「アレと言うと…?」
憤怒を押し殺し丁寧に聞く。また半殺しにされそうだから。
「アレと言うと?じゃないでしょう。持ってきたでしょ、紙を」
「あ、あの設計図か!」
アレとは例の配達物の設計図のことか。全く、アレアレって中年か!
「「!!!!!」」
…気づくと、その少女は目を見開き、眠そうにしていた少女も一気に首を上げて俺を見つめていた。あれ、何事か?
「見たんですか…」
あんたさっき俺の脳内スキャンして、自分で『見ています』とか言ってたよな?なぜ今更また驚く。
「もう見ちゃったならしょうがないねぇ~」
「何をそんな楽観的に…!」
海留少年の方はめっちゃ楽観的だが、眼鏡女子の方は深刻な顔付きだ。それにしても、
「おまえ、何でまた驚いてんだ?自分で俺がこれを『見ています』とか言ってただろ」
そのまんまぶつけてみた。
「普通の人間にはこれが設計図だなんて分かりません。寸法も図もなかったでしょう?」
だが裏には鉛筆で設計図とあったぞ……?変だな。
「まさか、中身をもう理解していちゃったりする?」
や、あんな暗号の羅列を理解できるはずない。
「全然理解できなかった。何なんだあれは?」
「知らない方が良いです」
「危険なのか?」
「ええ、まあどう危険かも教えられません」
まあ良いけど。教えられたら逆に不安になるだろうしな。
しかし、見えないはずの文字が俺には見えたってのか?
「それにしてもお前たちはあんな意味不明文字を理解できるのか?」
「まあ。生徒会ですから」
「なんだそれ。全くお偉い身分だな。俺なんて分かってせいぜい真ん中の羽のマーク───」
「「はあっ!!??」」
再び見開かれる眼。同時に机を両手のパーで叩いて立ち上がった。おい、こっちが驚くだろう!
しかも楽観的少年海留がこのとき激しく振り向いたのだから余計に驚いた。
胸騒ぎに似た感覚が俺を包んだ。
微かに開いたカーテンの間に立ち並ぶ木は、微動すらしていないようだが。
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