43人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて」
会長がソファーに体を落とす。そして付けているヘッドホンに意識を向けて、
「ん、……ああ、そっか」
と呟いてからこう一言。
「この人、抹殺するしかないわね」
俺を指差す会長。とうとうお前らまで俺を殺すのかよ!
「もう情報が出回っているんですか?会長」
「まあね、早い早い」
二人の女子が短い会話を始める。情報って……何の情報だ?
「まさかこうも刻印見られたことが出回るなんて」
ホントに情報出回り早い!じゃあこいつらが俺を殺さなかったとしても、人ならぬ者が俺の命を?
……いやまさか!何してんだ俺、毒されてはイカン、正気を保て!
会長は影に顔を半分染めて、
「情報が出回った以上、こっちに厄介事が波及する前に痕跡すら残さないようにあんたを抹殺する」
眼鏡女子が口を動かし、
「かつ情報工作をして周囲の目を欺き」
「何もなかったかのような日常が戻る。一件落着だね」
海留が締めくくった。
いや、誰がこんなことを真に受けろと?俺は毒されんぞ。
「大体お前らが言っていることの保証はどこにもないじゃねーか!何が人ならぬものだよ!そんな話聞いてみすみす殺されるような馬鹿じゃねーぞ俺は!」
「全部真実なのですから仕方ありません。あなたには死ぬ以外方法がありません」
決めた、もう帰るぞ。付き合ってられねーな!出会って5分のやつらに何で無抵抗で殺されにゃならん!
足が出口に向かって動き出す。無駄に大きな音を立てながら。
しかし出口のドアの寸前、俺の前髪が不自然に揺れた気がした。
「何がどうあれあんたにはおとなしく散ってもらうわ。後のことは工作するから」
背後でゆっくりと長い髪を揺らしながら俺に迫る会長は、身に付けたマントを軽く払って右腕を横へ突き出した。
ついてきた眼鏡女子は会長の位置から一歩下がり眼鏡を中指で押し上げる。
海留少年は何も言わず適当な椅子に座った。
次の瞬間、会長の横に突き出した右手に青い縦の閃光が走った。
同時に何かを破壊する音が俺の鼓膜を揺らし、確認すると、天井の一部が今の閃光で吹き飛んでいる。
―――何という物的証拠!
…今までの話は本当だったのか?
俺が今まで信頼して暮らしていた世界は、こんなにも大胆に裏切るのか?
―――これもまた、『運命』か?
最初のコメントを投稿しよう!