プロローグⅠ

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巡り巡ってやって来た何とも憂鬱な季節、春。 全く見知らぬ人々との共同生活に桜のような華などあるのかと常々思っていたのだが、人生における殺伐としたそのロードを通るのは全国の高校入学生にとっては必然であり義務であるのだった。残念である。 ふっ、と軽いため息をつき、マシな高校だろうか?何事もなく大学へ行けるだろうか?しかし何かしら厄介事がつきまとうだろう、などとどうでも良いことを考えている内に、初々しい高校生たちを飲み込んでいく殺伐ロードへの門が姿を現した。 静天高等学校 正門 皆ここに入って虚ろな2ヶ月を過ごし、その間工夫を凝らして戦友を見つけ出し共に高校生活という強敵と戦うのだ。いや、大袈裟か。 たじろいでいても仕方ない。入らない限りは何も始まらないし、そもそも親に何と言われるやら。 周りを見ろ。みんな顔をこわばらせているぞ。不安なんだよみんな。 憎たらしいほどにニコニコした教師に道案内をおずおず求める生徒もいれば、さっきっから扇風機のように首ばっか回して足が休憩している生徒もいるし、全く緊張せずにズカズカ進む5人組も見受けられる。 まあ、みんながみんな緊張しているわけでもなさそうだ。 意を決して門を通過する。 県立ゆえにさして広くもない校門~昇降口間をなるべくギクシャクしないように歩いていった。 幾人かの教師が俺に振り向いた。この頭髪のせいかもしれん、昨日床屋行っとくべきだったか? 小さくて、明らかに毎年使い回されている風体をしおり『新入生はこちら』と書かれた看板に従い、1年用昇降口に向かう。 目をやれば、そこには生徒より小さいくせにぶかぶかのスーツを着て、これまたニコニコと生徒を案内する女教師がいた。最も、教師と断言していい身長なのか不安だが。 残酷な傾斜を誇る階段を上がりざわめきの感じられない教室に入ると、中学の頃からの悪友の夜崎秀悟がいたり、明らかに殺意を持った視線を教室全体に振り撒く背の高いやつがいたりと、ケンカ体質の俺にとっては住めば都っぽい。 そんなこんなで席につき、適当な説明があり、ただ立ってるだけのだるい入学式を行うために教室から体育館へと向かうことになった。 そう、やれやれと廊下を歩く俺はこの瞬間も当然のように普通の運命の中に生きていたのだ。 はて、「普通の運命」とは?
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