プロローグⅠ

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満天の星が輝く脳ミソを何とか起動して顔を上げると、見下すように教科書を持った皇帝がいる。 何故か?自分の授業で爆睡をキメ込む生徒がいたからだ。 そして?目の前にいる鬼桐教師、別名皇帝は、県内最凶の教師であることで有名。 この状況、まさか。 「もう一度夢に堕としてやる。寝る子は育つだろう」 縦になった皇帝のてのひらが脳天にクラッシュ。 世界が真っ暗に染まった。真っ赤でなかったのは幸いか。あと、教科書ではなくチョップによる裁きだったのは愛情だったのか? ちがうか、単純に教科書が変形するのが嫌だっただけか。 俺には何で寝ちまったかなんてわからない。人間は不思議な生き物だから、そんなことが起きたって変ではないはずだ。一応は。 人間の記憶っていうのはどういう仕組みでとっておいているのだろうという疑問だってそうだ。不思議である。非常に。 しかし思えばこれは迷惑極まりないことだった!例えるなら犬のフンをほったらかしで帰る飼い主くらい! はて、なぜかって?そんなことはもう少ししたら分かる。それこそ、痛いくらいに。 多分、ここから運命の歯車は回り始めてしまったのだろうな。 ……違うな、「別の歯車の起動スイッチも押しちまった」の方が的確かな? とにもかくにも、運命を初めて恨んだのはこの日だったのだ。 今日がそんな日になることも知らずに授業終了後、悪友である夜崎秀悟とくっちゃべる俺は、今だ取れない脳天の激痛を摩りつつ不安の旨をその悪友に色々ぶちまけるという、実に普通の高校生らしい行動を取っているわけである、が。
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