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夏侯惇が言い終わったと同時に、私は自分用に改造した…西洋のハルバートをモデルに改造した戟を手に握っていた。あまりにも品位に欠けていたから、天下無双・改で血祭りにしてあげたの。だいたい、声が大き過ぎるのよ。
しかもそれは貂蝉様に関する事、仕方がないわよね。
うわ…、それにしてもグチャグチャ…。
張遼に目を向けると、私の行為に驚いたのか目を細めてる。
「…何?」
「いえ、行為をした上で困っているという事は。貂蝉様の本心が分からない事に、悩んでおられるのかと思いまして。
王允殿も、それなりの理由があって成長された貂蝉様を董卓様に謁見させたのだと思いますし。」
「流石知将としても名を馳せる、張文遠ね…。恐れ入るわ。」
そう怖かったのよ。貂蝉様が私に紡いでくれる「好き」という言葉も、重ね合わせてくれる温かな肌も、もし唯の気紛れかと思うと怖くて仕方が無かった。私が疑り深くなり過ぎている気はする。でも貂蝉様の瞳は、いつも奥が見えない感じがして仕方が無かった。
それに、やっぱりおかしな事だし…。
「姫ぇ~。」
っ!?
突然響いた、忘れもしない声音に慌てて振り向くと。貂蝉様が、ちょうど手を振りながら扉の外を通り過ぎて行くところ。表情は相変わらずの、どこか不敵な笑みで。
…っ。何処かに向かう途中かしら?
姿が見えなくなってから、ホッと息をつく。っていうかタイミング悪すぎるわよ。心臓止まるかと思ったじゃない。
が、それも束の間鼻をピッと弾かれた。
「痛っ!」
誰がやったのかと瞳を巡らすと、復活した元譲だった。
…再起の法?
「心配する必要なんて何処にもねぇよ姫様よ。同姓に身体を許すということは、その行為に匹敵する強い想いが無いと不可能だ。分かるだろ?
直接会って、直接本心を聞いてみれば良い。きっと良い返事が貰えるぜ。」
口の端を吊り上げて言う元譲の言葉に正直、私の重かった心が少しだけ軽くなった気がした。悔しいけれどね…。
「なあ、文遠。今夜の事だけどよ…。」
そんな私を他所に、元譲がひっそりと張遼に囁いた。
「いえ、今宵は忙しくなりそうなのでお断りいたします。」
きっぱりと否定の言葉。きっとそれはさっきの涙のお返し。それにしても残念だったわね元譲。良い返事が貰えなくってさ。
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