天下無双姫の世にも奇妙な恋の悩み

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 桃園の香り漂う季節。私呂姫は、柔らかな光が差し込むとある城内の一室で、卓に着いて頬杖も突きながら、貂蝉様との一件に頭を悩ませていた。 なんていうか、欲しいのだけれどおかしい事なのだもの。  不意に桃の香りよりも甘い香りが私の鼻腔に入り、脳髄を痺れさせた。同時に、身体が背後から温かい物に包まれる。振り返らなくても、身体が覚えている、この温もり、この香り、間違いなく貂蝉様だ。  自分の自慢の乳房をよりもずっと良質で淫らな乳房が、背中に直に押し付けられて、脳髄が一気に桃の色に染まってしまった。 「姫。何か悩み事?」 貂蝉様が微笑みながら、温かい最高の触感の頬を私に擦り付けながら言ってくる。まったく、人の気も知らないでよくもまぁ飄々と。 誰の為に天下の女将呂姫様が悩んでいると思っているのよ…。 「悩み事よっ!」 ぶっきらぼうに言ってあげたつもりなのに、頬が熱くなってしまって格好がつかなかった。  貂蝉様はやはりそれが可笑しかった様で、クスリと微笑を零した。 「相変わらず、可愛いお姫様ね。」 笑みと言葉の一つ一つが私の心を掴んでくる。それは、心地よくて、抗いたくて、最終的には不快な感覚。  感情を読み取られたくなくて、視線を下げる私。 「この間のこと?」 甘い言葉に、その事が鮮明に思い出されて。私は、ハッと背後の貂蝉様に振り返ってしまった。そこには優しげな笑顔があって。少しは戸惑いなさいよ。と思いつつも、私は頬を更に赤らめてしまった。
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