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連れて来られたのは、城内の桃園。どうやら、食べられるのは私ではない様で、ほっとした様な、寂しい様な複雑な気持ち。
貂蝉様が、ふと木の幹に目を留めた。何かしら? と思いつつ目をやってみると、そこには幹に掴った一匹のクワガタ虫。
貂蝉様は何が面白いのか、そのクワガタの頭を指で撫で始めた。当然クワガタは怒り始めて、大きな顎を立て始めた。
「何をしているのよ?」
不意の突拍子な行動に、つい呆れた言葉が出てしまう。
すると貂蝉様が「ふふぅん」と笑って。
「直ぐに怒って可愛いのよ。姫みたいにね。」
…あんたね。
虫をからかって何を言い出すのかと思えば、私の感情は節足動物と同レベルだとでも言うの? 私はつい、米神に指を当ててしまった。
「私はそんなに怒りっぽくはないでしょう!」
気位が高いのは認めるけど。
「そう? いつも貴女には怒られている様な気がするわよ。私はね。」
っ。だってそれは…。
―貂蝉様に心を読まれたくないから…。
ずるいよ。可愛いだとか、大好きだとか、気軽に何度も言うなんて。絆されない様にするなんて、無理じゃない。
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