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貂蝉様が自ら身体を離した時、私の心の芯が確実にこの人を欲したのが分かった。温もりを、身体を、そして心全てを。
欲した気持ちに比例して大きく膨らむのは、酷い喪失感。その時の私の表情は、呂布の娘とは思えないほど情けない物だった。
崩壊した理性。けれど、悲しいかな、それを元に戻してくれたのは貂蝉様本人だった。
「ごめんなさい。時間なの。」
…え、時間?
瞬間機能を停止しかけていた神経が、一瞬にして復活した。羞恥心と、今まで養われてきた戦姫としての本能で。
人の気配だ、微かだが大地を踏みしめる気配が一つ。
それにしても、貂蝉様の方が先に気配に感づいたというのは、呂姫としては非常に情けない話よね…。
はっきり言って全部貂蝉様のせい。
木陰から現れたのは、髭を蓄えた長髪の男。
「貂蝉様、こちらに居られましたか…。姫様も。」
冷静さと紳士的な雰囲気を感じさせる彼は、父呂布奉先第一の配下、張文遠こと張遼だった。
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