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外から来た者といえば、先程庭に居た黒衣の人間、湊もそれである。
湊は現在松平の手足となっている。
もう一方の外から来た者達は悩みの種でしかないが、こちらは真逆である。
そう思うと笑いがこみ上がった。
(不思議なものだな。
思えばあの日、儂は良い拾い物をしたのだな)
そう、拾ったのだ。
あの日、身を刺すような寒さの中で。
数ヶ月前
2月ももう終わりだというのに雪の降る寒い日。
屋敷の庭を自室から眺めていた松平の視界になにか黒い、異質なものが入ってきた。
はじめはごみかとも思ったがよくよく見てみるとそれは人間にも見えた。
無用心だとは思ったがそのとき松平は何故か自然とその人影らしきものに走りよっていっていた。
その者は見慣れない服装で意識が無いらしく、ぐったりとし、体中に怪我が見られ、そこから流れでた血が雪に染み、まるで椿が雪に落ちているようだった。
くせ者かとも思ったが、とにかく手当てをせねば取り調べることも叶わない。
すぐに屋敷の者を呼んで部屋にその者を運びこませると手当てを命じた。
その者が目を覚ましたのはその晩、丁度夕食のあとぐらいだっただろうか、知らせを受けて松平は部屋に足を運ぶんだ。もちろん、何故庭で倒れていたのか、何者なんだという事を問いたいというのもあったのだか、何故かそんな事は関係なく気になった。
そして、部屋に入った松平は背中を冷や水を注されたようなゾッとする気に刺された。
気の元はあの人間。
目が覚めて、鋭い表情で周囲を警戒していたらしいその人が刺すような視線で松平を貫いていた。
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