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松平に与えられた部屋で湊は一人調査内容の報告書を書いていた。
9月といえどまだまだ残暑の厳しい日々が続くゆえか部屋の窓は大きく開け放たれている。
報告すべき点を書き連ねてゆきながら湊は自分の今の状況について考えていた。
最近やっと、持ち前の適応力でここでの生活に慣れ始めた(あまり以前の暮らしとやる事は変わらないのだが、生活様式が以前から数百年単位で逆行したというのはかなり慣れるのに苦労した)とはいえ、いや、慣れてきたからこそ何故この時代に来たのかと考える余裕ができた。
あの時代での最後の記憶は目の前が真っ白になったあの閃光。
そして意識が黒く塗り潰される刹那、死を覚悟した湊は何故か知らない部屋で目が覚めた。
(あの時は柄にも無く酷く狼狽していて松平様に無礼をはたらいてしまった。)
初めて顔を会わせた時の事を思い出すと溜め息が漏れる。
もしも松平が湊に手を差し伸べなければ、湊が知りうるものが何もないところで一体どうなっていたことだろうか。
そう考えるだけで背中に冷たいものが流れる。
湊の知らない景色、
文化、
人々、
そんなものばかりが目の前に広がった。
しかし、幸いにも湊には今までの生活で培ってきた人並み以上に誇れる”戦う力”があったのでそれを生かして松平の役に立てる分、卑屈にならなくてよい要素とはなっている。
つくづく人は努力はしておくものだと思う。
そこまで考えて湊は
報告書から顔を上げて窓の外に目をやる。
(私が今居る時代は文久三年というらしい。
私が居たのは西暦25xx年――。
そう、つまり私は本来ならばありえないことだが随分と昔に来てしまっているらしい。
今は無いが私の本にも昔のエリア日本、つまり日本には細かい年号が沢山あったと書いてあった。)
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