プロローグ

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思っていることと反対のことを言われるままに行うなんて、 本当に私もつくづく人形みたい。 私はいつも読んでいる本、私の生まれたエリアがまだ国であった頃の歴史書、つまり日本の歴史書の中身を思い出してみる。 私が随分昔に抱いた感情を思い出させたもの。 気まぐれに行った図書館の隅にひっそりとあったそれ。 その中には私の知らない世界が広がっていた。 小さな島国の中で争い続ける人々、 いくつもの時代が移り変わった頃。 詳細な情報は過去の戦争で失われ、おぼろげな記録だけしか残っていないけれど、私はそれが、変わっていくことが何よりも羨ましかった。 本のなかではいかに争うことが愚かかを謳っていたけれど、私はそれが愚かだなんて思わなかった。 意思と意思、思いと思い、それがぶつかり合うことのどこが愚かなんだろう? 羨ましい。 私もどうせならそんな時代に生まれたかった。 そうしたら、こんな意思なんて有って無いような生き方をしなくてよかったかもしれないのに……。 本当に、羨ましい。
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