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アンヘルタウン
人々は賑やかに騒ぎ、空には花火が咲く。その国の高台に、元老院はあった。
そしてそこに花火を眺める男がいる。
「聞こえるか?人々の喜びの声が。…今日は我らのアンヘルタウンが設立されて三回目の記念日だ」
隣には、一人の天使。銀の髪を短く揃えた天使は黙って、その男の話を聞く。
「人はアンヘルタウンを奇跡の国と呼ぶ。未だかつて人類が到達したことのなかった愛と平和。我が国以外での場所では相変わらずの貧困と戦乱が続いている」
男は小さな花瓶を手に取り、白い蘭の花を撫でる。
「我々はまさに現代のエデンに住んでいるのだ。見たまえ、昨日まで枯れそうだった蘭の花が今日はいっぱいに開いている。こんな小さな花にも命はあるのだ」
天使は無表情のままだが、その瞳は深い崇拝の念を彼に送っていた。
ピピッ
天使に通信が入る。
「何者かが国境ゲートを突破し、アンヘルタウンに向かっています」
報告を聞いた天使は男を見る。男は頷き、
「やむを得ん。重武装プリニーを使いなさい」
天使は手を胸に当て、静かに、
「ユシ様は正義。そして私は正義の下僕」
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