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翌朝、つぐみが目を覚まして朝食の席に向かうといつもと違った顔があった。
「おはよう、つぐみさん。」
つぐみが部屋に入るや否や、高居雅人は真っ先に挨拶をした。
高居は財務大臣の息子で今は桜波電工に勤めている。京都大学を出たエリートで、彼が桜波電工に入社したのは英樹の強い希望だったとされている。政治家との結び付きを強くしたいのだろう。そして…高居はつぐみの婚約者となった。世に言う政略結婚だった。
私は人質、もしくはお金で売買されるペットよ…つぐみはこの結婚を考えると気分が酷く憂鬱になる。
「おはようございます。うちで朝食なんて珍しいですね。」
しかしつぐみは笑顔を見せて話す。
「朝から社長に呼んでいただいてね。社長、今日はありがとうございます。」
「いいんだよ。君とはいろいろ話したい事もあったし。」
英樹が上機嫌で話す。英樹は高居を偉く気に入っており、一秒でも早く、今すぐにでもつぐみと結婚させたいのだろう。
「つぐみ、雅人君はすごくお前を気に入っている。良かったじゃないか。」
つぐみの正面、長いテーブルの向こう側に座る英樹はつぐみに満面の笑みを向けた。
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