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3
つぐみが朝食を済ませる頃には、英樹も高居も仕事に出かけて部屋にはつぐみが一人残された。
「お嬢様、朝食はお済みになりましたか?」
執事の渡部が優しく声をかける。
「ええ、美味しかったわ。」
つぐみは問いかけに答えた。
渡部はつぐみが生まれるずっと前からこの家に勤めている老紳士だ。英樹の命令ではあるが、つぐみの外出には同行するなどしており、つぐみの世話は昔から彼がついているので、心を開く事のある数少ない人間だった。
「今日は予定は特に無いのよね?」
「はい、今日はゆっくりなさって下さい。」
「でも最近外出してないわ。」
「そうおっしゃいますが…ご主人様に許可をいただかないと…」
「どうして許可がいるのよ!」
つぐみは声を荒げた。しかし渡部は悪くないのだ、そう気付いてすぐに冷静さを取り戻した。
「あっ、ごめんなさい…」
「いえ、お嬢様の気持ちも良くわかります。しかしご主人様にそう言われておりまして…」
「あたしはもう23なのよ…同い年の子はもう働きだしてるの。それこそうちの会社にもたくさんの23歳が居るわ、女の子もたくさん。なのにどうしてあたしは駄目なの?働くこと以前に外出にも許可がいるなんて信じられない。」
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