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「ほら、入って下さい。」
つぐみが手招きして志津里は遠慮がちに部屋に入るが、どこか落ち着かない素振りを見せる。
「どうしたんですか?何かそわそわして。」
「いやぁ、娘から部屋に入るなって普段言われてるもんだから若い女性の部屋に入るとどこからか怒られそうな気がして。」
志津里は照れ笑いを見せながらもキョロキョロしている。
「あたしが呼んだんだから誰も怒りませんよ。それより、これ受け取って下さい。」
そう言いながらつぐみは細長い箱を志津里に渡した。
「これがプレゼントですか?何だろうなぁ。」
「早く開けて下さいよ。」
つぐみに促され、志津里が箱を開けると「ああっ」と感嘆の声をあげた。
「どうですか?」
「素晴らしいなぁ、こんな良いネクタイありがとうございます。」
「きっと似合うと思ったの。志津里さんはいつもネクタイが少し派手だからこの位のシックな方が男らしいわ…あっ、やっぱり似合ってる。」
つぐみが箱のネクタイを志津里に当てがう。
「しかしこれは高級なネクタイだったでしょう。こんな良いもの戴くのは申し訳ないですよ。」
「良いのよ、あたしがあなたの為に買ったんだから。別に車を買った訳じゃないんだし、受け取って下さい。」
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