最終章 飛べない鳥

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逆に志津里が翼に問う。 「親が死んだってのに姉さんが浮かれまくってるからだよ。警察はそんな些細なきっかけで人を疑う…そうだろ?」 「十分なきっかけじゃないか?普通はそう思うよ。羽を伸ばし過ぎだからね。」 やっぱりそうか…翼は予感が当たった事が残念でならなかった。 「いいか、姉さんは父さんに小さい頃から厳しく縛られて振り回されて来たんだ。殺されなくても死んだらどの道今みたいな態度になったろうよ。」 「もしかしたらそれが原因で殺しちゃったかもしれないし、他にもいろいろあるよ。足跡とか金庫の解錠番号知ってるとか、この犯行は女性がやった可能性が濃厚だしね。」 「そんな状況証拠…全部覆せるさ。それにちゃんとした証拠はあるのか?」 志津里は首を横に振る。 「ほら、証拠一つ無いんじゃないか!そんな事で姉さんを逮捕されてたまるか…姉さんはやってない。」 翼はだんだんと小さい声になった。 「私もね、堂々と証拠を突き付けるよりも、彼女の方から言って欲しいんだ。それに彼女の笑顔を見ているとね、彼女が犯人で無くて欲しいとも思うよ。どこかしら君とも同じ気持ちさ。」 志津里は少し切ない声で言った。 そして翼はそれを聞いて少し戸惑った。 「そんなの信じられないな…姉さんは俺が守る。」 そう言い残して翼は部屋を飛び出した。 志津里は心地よく入る風を遮る様に窓を閉め、ベッドに腰掛けた。
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