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もう、昔から変わらないんだから…口数は少ないものの、誰よりも思ってくれている弟の存在につぐみは改めて気付いた。
「大丈夫よ、あたしは殺してないし、志津里さんは良い人よ。良い歳して泣かないでよ。」
「でもさ…」
翼を見ていると小さい頃に戻った気分になり、つぐみは思わず微笑んだ。
「覚えてる?昔あたしが大切にしてたガラスの置物、お母さんが誤って割った時にさ、あたしよりも泣いてたよね?お姉ちゃんが大切にしてたのにって。」
「覚えてるよ…懐かしいな。母さんも…」
翼も少し表情が明るくなる。
「だから翼は変わらないなぁって思った。あたしは翼にいつも助けられた気がする。」
「でも姉さんは変わったよ。最近、うまく笑えてる。」
「そう思う?」
「うん。この事件って姉さんは結果的に良かったんだと思う。残念な事ばかりじゃないんだよ。」
翼の一言はつぐみが何もしていなければとても良く響く言葉だったのだろう。しかし、この場合にはつぐみの心に後ろめたさが大きく残った。もちろん、翼にはわからなかった筈だが。
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